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あなたとカモミールティーを

【堂上家の厄日3】

お待たせしました。
【堂上家の厄日】今日でラストです。
期待はずれだと思うのですみません。先に謝っておきます(笑)
今回が一番長いです、多分。

まだ読んでない方はこちらを先にどうぞ。
【堂上家の厄日1】
【堂上家の厄日2】



小牧が帰ると途端に堂上の顔が優しくなった。

「郁、怪我痛くないか?」
「うん。大丈夫。それよりごめんなさい怪我して。」

ベットの堂上の隣に座ると俯いた。

「なんで謝るんだ?」
「だっていつも怪我しないようにって言われてるのに―。」

郁の頭を撫でてやり顔をあげさせた。
見ると目に涙を溜めていた。

「郁、泣くことないだろ。お前は子供を助けたんだから。」
「篤さん怒ってない?」
「怒ってないぞ。副隊長より早く気付いたんだから誉めてやりたいくらいだ。」

そう言って再び頭を撫でてやると安心したのか堂上の肩に頭を乗せてきた。
しばらく撫でてやっていると鼻をすする音が聞こえてきた。

「郁?」
「何でもない。」
「何でもない訳ないだろ。どうした?痛いのか?」
「ううん。大丈夫。」
「じゃあどうして泣いてるんだ?」
「―ごめんなさい、心配かけて。」
「ふっ。なんだ、そんなことで泣いたのか?心配はしたがお前が泣くことないんだぞ。」

小牧が部屋に入ってきた瞬間郁に何かあったと思い心配したのは確かだ。
怪我をしたと聞き思わず渋い顔をしてしまい小牧に注意された。
だが心配した堂上を思って郁に泣かれるのは不本意だった。
宥めるように背中の傷に触れないように優しく抱き締めてやった。
落ち着きを取り戻した郁は何かを思い出したかのように顔を上げた。

「篤さん、さっき小牧教官が言ってたの何のこと?」
「あれか―。気にすんな。」
「えー。気になる。」
「じゃあ教えてやる。公休の前日にすることだ。」
「キャー!篤さんのエッチ!」

そういうと慌てて堂上の側から飛び退いた。

「アホか貴様は!言ったのは小牧だ。
俺は怪我してるお前にそんなことするほど節操のない人間じゃない。」
「うっ。ごめんなさい。」
「お前顔色悪いぞ。クマもできてる。昨日あまり寝られなかったんだろ?
悪かったな。少し横になれ。俺も少し寝るから。」
「篤さん、腕枕してくれる?」
「腕枕ならいつもしてるだろ。好きなだけ使っていいぞ。」
「ありがとう、篤さん。」

そう言うと差し出された腕に嬉しそうに頭を乗せて胸に顔を埋めた。
傷口を気遣いながら軽く抱き締めてやるとあっという間に眠りに落ちた。


目覚めると隣にいたはずの夫がいなかった。
「篤さん?」

見回すと窓の外はもう暗く枕元の時計は6時を回っていた。
心細くなり寝室のドアを開けると堂上が料理をしていた。

「おはよう、篤さん。」
「郁、起きたか?具合どうだ?」
「ちょっと痛いけど大丈夫。」
「飯喰ったら薬飲んでおけよ。」
「うん。あっ、手伝うよ。」
「もう出来るからお前は座って待ってろ。怪我してるんだろ。」
「ありがとう。」

堂上の気遣いに感謝して座って待ってると郁の好きな肉じゃがを持って堂上が現れた。

「わーい。篤さんの肉じゃが久しぶりだ。」
「看病してくれたお礼だ。ちゃんと食えよ。」
「うん。いただきまーす。」
「召し上がれ。」

久々の肉じゃがに郁の食欲はいつも以上だった。
片付けをしようと立ち上がる郁を怪我を理由に制した。
手早く片付けを終え郁の下に戻ると書庫の配置を復習していた。

「ちゃんと覚えてるか?」
「もう!何年目だと思ってるの?覚えてるよー。」
「ならいい。そうだ、さっき柴崎からメール来てお前のこと心配してたぞ。」
「あっ!メールしようと思って忘れてた。手塚に言われてたんだよね。」

そう言うと携帯を取りメールを送った。
『心配かけてごめんね。ちょっと縫っただけで大丈夫だから。しばらく書庫になるのが嫌だな。』
返事はすぐに来た。
『手塚から聞いたわよ。あんまり教官に心配かけると禿げちゃうわよ。
明日私も書庫だから。足手まといになるんじゃないわよ。』

「篤さん、禿げないでね。」
「ブッ。何だ急に。」
「あんまり篤さんに心配かけると禿げるって柴崎が。」
「そうだな。あんまり心配させるなよ。」
「うっ。心がけます。」
「お前風呂入れないんだろ?先に体拭いてこい。」
「あー、もうちょっとやりたいから篤さん先に入っちゃって。
病み上がりなんだから髪の毛ちゃんと乾かしてね。」
「わかってるよ。じゃあ先に入らせてもらうかな。」


風呂から上がってリビングに行くと郁はテーブルに突っ伏して寝ていた。

「郁!もうちょっとやるんじゃなかったのか!」

そう言って軽く拳骨を落とすと寝惚け顔で堂上を見た。

「あれ?私寝てた?」
「顔にくっきりノートの痕付いてるぞ。」
「うそっ!おかしいなぁ。ちゃんとやってたはずなんだけどな。」
「やっぱりお前は勉強嫌いなんだな。」
「うーん。薬飲むと眠くなるのかなー。」
「お前、間違えても作業しながら寝るなよ」
「分かってますよ。家だから気が緩んだの。」

郁の言葉に思わず苦笑いした。

「お前も早く体拭いてこい。間違っても湯船に浸かるなよ。」
「もうわかってるよー。」
「拭いてやろうか?」
「じ、自分で出来ます!」

逃げるように風呂場に向かった。
風呂から出た郁の背中に薬を塗ってやり少し早いが眠りについた。

翌朝2人揃って出勤するといつもより早いにも関わらず緒形と小牧が既に来ていた。

「おはよう」「おはようございます。」
「2人ともおはよう。笠原さん傷口どう?」
「はい、大したことないんで大丈夫です。ご心配おかけしました。」
「書庫作業頑張ってね。」
「任せて下さい!」
「ぶっ。昨日復習しながら寝てた癖によく言うな。」

自信満々な郁に苦笑いしつつ堂上は緒形の席へ向かった。

「まずいな、こっち来るぞ。」とビクビクしてるのを悟られぬよう平静を装った。

「おはようございます、副隊長。ちょっとよろしいですか?」
「おう、堂上。具合はどうだ?」
「お陰さまですっかりよくなりました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」
「いや、大したことなくてよかった。」
「昨日のことなんですが―」
「すまん、堂上。笠原に怪我させちまって。」
「いえ、副隊長、頭を上げて下さい。
いっ、笠原が不審者を捕まえるのでなく子供を庇ったのが原因ですから。」
「お前怒りに来たんじゃないのか?」
「違いますよ!昨日2人して迷惑かけてしまったお詫びにきたんです。」
「なんだ、そうだったのか。てっきり怒鳴られるのかと思って覚悟してたんだがな。」
「自分を何だと思ってるんですか!」
「何って笠原の番犬だろう。」
「副隊長ーー!」

そう怒鳴ると挨拶もそこそこに緒形の下を辞去した。
席に戻るといつの間にか手塚が来ていた。

「篤さん、どうしたんですか?」
「いや、どうもしないぞ。」
「篤さんが副隊長に怒鳴るなんてどうもしなくないじゃないですか。」
「堂上一正、副隊長が昨日笠原に怪我させたことかなり焦ってたのですが。」
「えっ?何で副隊長が焦るの?」

手塚の言葉に肩を小刻みに震わせていた小牧だったが郁の言葉で臨界に達した。

「ブハッ。笠原さん鈍すぎ。ククッ。」
「えっ?小牧教官何がおかしいんですか?っていうか鈍いってなんですか!」
「小牧うるさいぞ!」
「はぁ。お前本当に分かってないのか?」

呆れたような手塚の言葉に「は?あんたは分かってんの?」と突っ掛かった。

「分かってるというか昨日副隊長に言われたからな。」
「何を?」
「お前が怪我すると、」
「手塚!」
「堂上班いいか、朝礼始めるぞ。」

かなり早く来たはずだったが気付くともうそんな時間になっていた。

郁を堂上と離すと堂上が気が気じゃないだろう、
というありがた迷惑な理由で今日は堂上班で書庫作業になった。

「笠原、痛かったら無理するなよ。あまりいっぺんに本を持つなよ。
厚い本はせいぜい2冊ずつにしとけよ。」
「もう教官大丈夫ですってば。心配しすぎですよ。」
「そうだよ、堂上。奥さんのこと心配するのは分かるけど業務に差し障りのないようにね。」
「なっ!俺は怪我が悪化したら訓練に戻るのが遅くなると思ってだな…。」
「はいはい。班長がうるさいから笠原さん無理しないようにね。」
そう言うと書庫へ消えていった。

「篤さん、ありがとう。」
「笠原、勤務中だぞ。」
「分かってますけど、今は篤さんにお礼が言いたかったんです。」
「あんまり可愛いこと言うな。我慢できなくなる。」
「あつっ、教官!笠原、勤務に戻ります!」

そういうと郁は慌ててリクエストの検索に向かった。

初めは堂上の言い付けに従い少しずつ運んでいた。
だが午後になると面倒になり堂上の目を盗んではいつも通り一度に運んでいた。

「コラ、笠原!」
「柴崎?」
「あんた教官に一度にたくさん運ぶなって言われたんじゃないの?
私だって一度にそんなに運ばないわよ。」
「だって面倒なんだもん。教官には言わないで。」
「何を言わないで欲しいんだ?」

聞きなれた声に恐る恐る振り向くとあきれ果てた顔の堂上がいた。

「じゃっ、教官、後はよろしくお願いしま~す。」

語尾にハートがつきそうな声で言うと足早に書庫へと消えていった。

「しばさき~!」
「おい、笠原!お前一度に沢山運ぶなって言っただろうが。」
「大丈夫ですよ。痛くないですし。」
「アホ!それは薬飲んでるからだろ。」
「そうですけど少しずつだと面倒なんですよ。」
「お前強制休暇取らされたいか?」
「えーっ!なんでそうなるんですか?教官横暴ですよ!」
「お前が大人しく言うこと聞かないからだ。治るものも治らなくなるぞ。」
「はーい、分かりました。」
「『はい』は伸ばすな!」
「はい!」

堂上の過保護すぎる監視から逃れることは出来ず、その日は渋々堂上の言い付けに従った。
官舎に戻ると過保護さは度を増し、
抜糸が終わるまでは一切の家事は堂上がやると言って譲らなかった。
普段なら隊長に押し付けられる書類も郁に怪我をさせてしまった負い目からか、
抜糸が終わるまでは緒形が自ら引き受けてくれることになり堂上もその好意に素直に甘えた。

翌日から堂上班は郁を除いて通常のシフトに戻った。
しかし堂上は書庫シフトの班に郁が無茶するようならすぐ自分に連絡を入れるよう頼んだ。
お陰で郁は堂上の監視から逃れることは出来なかった。
そして二度と縫うような怪我はしないと心に誓わざるをえなかった。

堂上の監視に耐え続け1週間、ついに抜糸の日を迎えた。
堂上の付き添いのもと朝一で病院へ行き抜糸を済ませた。
抜糸を終え事務室へ行くとたいした怪我でもないのに盛大な祝福を受けた。

「笠原さん、抜糸おめでとう。」
「ありがとうございます。ご迷惑をおかけしました。
本日より通常シフトに戻らせていただきます!」
「それにしても笠原さんよく耐えたよね。」

そう言うと小牧は肩を震わせはじめた。

「小牧教官?耐えたって何にですか?」
「堂上一正の監視にだろ。お前本当に愛されてるよな。」
「手塚、何言ってんのよー。」

そう言うと手塚の肩を叩いた。

「痛っ。お前治ったからって調子に乗って思いっきり叩くなよ。」
「あっ、ごめんごめん。」
「いやー、だが1週間面白い見せ物だったぞ。
番犬堂上のことを知らない奴はもう第一図書館にはいないんじゃないか?」

玄田の発言に小牧が更なる上戸に陥り小牧につられるようにして、
他の隊員も勿論郁も例外にもれず爆笑の渦に包まれた。
手塚だけが渋い顔をして笑いを堪えていた。
そして事務室に堂上の雄叫びが響き渡った。

「隊長!誰が番犬ですかーーー!」

fin.



お楽しみいただけたでしょうか?
すみません、ラストがギャグっぽくなっちゃって(笑)
どうしても『番犬』ってフレーズを使いたかったんです。
そして篤さんなら絶対にうるさいくらい注意しまくるんだろうなと思ったので、
かなりの世話焼きになってもらいました。
そして特殊部隊の面々はそれを生暖かく見守っているだろうと。
で、からかいの的がなくなっちゃったので最後に盛大に隊長が爆弾を落とすと。

次のSSはまだ作成中なのでいつになることやら。
『AKURO』の総括を先に終わらせちゃいたいので来週以降かなぁ。
っていうか総括書くのそんなに時間かかるんかい(笑)
1回でサクッと終わらせたいのですが、『サイゴン』は9回かかってるからなぁ(^^ゞ
危険信号点滅中です。
先にSS書き上げちゃう可能性もあるかな。
マイペースにやって行きますので今後も宜しくお願いしますm(__)m
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